インバランス料金とは?制度や計算方法について詳しく紹介

電気事業に関心がある方であれば、インバランス制度についても関心を持たれていることと思います。そもそもインバランスとは何を指し、何を目的にしたものなのでしょうか。制度の概要と、電気事業におよぼす影響を紹介します。

インバランスとは?

そもそもインバランス制度とはどういったものなのでしょうか。

インバランス制度の概要

インバランス制度における「インバランス」の元の意味は「電力の需要量(使用される電力量)と供給量の差分」のことです。その差分にかかる料金としてインバランス料金が発生します。インバランス料金は需要インバランスと発電インバランスの2種類があり、具体的には下記の情報を参照して差分を決定します。

● 小売電気事業者等が、あらかじめ一般送配電事業者に提出する、電力の需要量や発電量を想定した計画値:「需要(発電)計画」
● 実際に対象地点で使用・発電された需要量や発電量の実績:「需要(発電)実績」

「需要(発電)計画」と「需要(発電)実績」の差分(インバランス)に対して、一般送配電事業者から請求や支払いが行われるのがインバランス料金です。小売電気事業者等は、需要(発電)計画と需要(発電)実績の間に差異が発生した場合、不足した電力量の補填や余剰となった電力量の買取が発生するため、内容に応じて一般送配電事業者とインバランス料金を精算する必要が生じます。

「計画値同時同量制度」とも呼ばれる仕組みですが、本記事では「インバランス制度」と呼んでいきます。

インバランス制度の推移

そもそも電力には、供給量と需要量は同量でなければならないという前提があります。電力の供給量と需要量のバランスが崩れると電気の品質(周波数)が乱れてしまい、電力供給に支障をきたす恐れがあるためです。

そのような事態を防ぐための対策がインバランス制度で、需要量と供給量を一致させる目的で創設されました。小売電気事業者等が合理的に需要量を予測し、その予測に応じた供給量を調達するために活用されています。
発生した差分に関しては、一般送配電事業者が「不足分を補填もしくは余剰分を買取」することで調整が行われます。この調整コストは最終的にインバランス料金として算出され、後に清算されます。小売電気事業者にとっては電源コストの変動要因となり、事業運営において、対応が重要となります。

インバランスリスクとは

小売電気事業者にとって「インバランス料金」は極力発生しないほうが望ましいでしょう。理論上、需要(発電)計画と需要(発電)実績に差がなければインバランス料金は発生しません。しかし実際には、電気の需要量の正確な予測は非常に難しく、発電量に関しても太陽光発電、風力発電等の再生可能エネルギーによる発電が天候等による影響を受けることから、差分を完全に回避することは困難とされています。

また、インバランス料金は電力市場の影響を受ける点にも注意が必要です。計算方法は後述しますが、インバランス料金は電力市場の価格をベースに算出されます。そのため、電力市場の電力価格が想定外に高騰すれば、インバランス料金も大きくなる可能性があるのです。

インバランス料金は、すぐに算出されるわけではない点も留意が必要です。電力の不足・余剰を判定する料金算定期間を経たのちに決定、その後、請求されます。例えば、東京電力の場合は、対象の料金算定を行った月の翌々月初(例:2021年4月の電気料金のインバランス料金は2021年6月初旬に清算)となります。請求されるインバランス料金を想定して準備していたとしても、実際に請求されたインバランス料金が「想定に対して大きく異なる」ことがありえるため、事業の安定性を乱す要素といえるでしょう。これらのリスクを称して「インバランスリスク」といいます。

インバランス料金の計算方法

では、実際のインバランス料金の計算方法はどうなるのでしょうか。

インバランス料金の計算方法

2020年6月1日以降のインバランス料金の計算方法を紹介します。

● 不足インバランス料金(計画に対する実績の不足分を一般送配電事業者が補填した費用)=スポット市場と1時間前市場の加重平均値×α+β+K
● 余剰インバランス料金(計画に対する実績の余剰分を一般送配電事業者が買取した費用)=スポット市場と1時間前市場の加重平均値×α+β-L

α:系統全体の需給状況に応じた調整項
β:地域ごとの市場価格差を反映する調整項
K・L:インセンティブ定数

インセンティブ定数とは経済産業大臣が定める額であり、系統全体が不⾜した場合は加算され、余剰の場合は減算されます。
「α、β、K、L」は調整項ですので、インバランス料金の軸になるのが、日本卸電力取引所(JEPX)における「スポット市場と1時間前市場の加重平均値」です。日本卸電力取引所とは電力の売買ができる卸電力取引所です。

インバランス料金が決まる電力の市場

インバランス料金は日本卸電力取引所の「スポット市場と1時間前市場の加重平均値」に大きな影響をうけます。これら2つの市場の特徴を紹介します。

スポット市場(一日前市場)

翌日の24時間分を取引する市場を指します。ここでは1日:24時間を30分単位に区切った48商品の取引を行います。小売電気事業者等は需要(発電)計画に対し、追加調達が必要な電力購入量や、余剰分を整理するための電力売却量を確認して入札します。この場合、調達量や発電量に余裕があれば「売る」、不足があれば「買う」というように需要(発電)計画の調整が可能です。

1時間前市場(当日市場)

毎日17時から翌日の取引が行え、各商品について受渡しの1時間前まで取引ができる市場です。こちらもスポット市場と同じく48商品の取引です。ただし、スポット市場では1日の取引を一斉に行いますが、1時間前市場では商品(30分)ごとの取引です。当日の急激な気候の変化や発電トラブル等の要因で需要と供給の過不足が生じた場合における調整場所としての役割を持ちます。

各市場ともに原則、需要と供給のバランスによって価格が決まります。「寒波・酷暑などの気候影響で電力需要が大きい」、「何らかの理由で供給電力が少ない場合」などの状況により市場価格が大きく変動する可能性があります。調整が入るとはいえ、そのような状況下でインバランスが発生すると、後に請求されるインバランス料金も高くなると考えられます。

なお、2つの「市場」は計画と実績の差分を調整できる場でもあります。差分が生じそうな場合に調整するための市場としてうまく活用すると共に、市場動向に気を配りながらインバランス料金の予測を立てていくことが望ましいです。あらかじめインバランスの予測を立てておくことは、後のインバランス料金の請求に備えた資金の準備や、計画策定の方針の見直しをしやすくなることにもつながります。

2020年2月には太陽光発電の高稼働を背景に市場価格が大きく下がる事態が発生しました。この時は、市場価格が下がったにもかかわらずインバランス料金が高価格になる逆転現象が生じました。これは調整をするためのα値が、数値上の関係で逆に値が大きくなってしまったためでした。それを受けて2020年6月にはαの下限値を撤廃する等の改正がなされました。

インバランス制度の動向

インバランス制度は、日々変化しています。変化に対応していくことも小売電気事業者にとって事業運営におけるリスクを抑える一つの行動になるでしょう。

近年の大きなトピック

2020年の年末から2021年頭には寒波と天候不順の影響で深刻な電力不足が生じました。その影響で日本卸電力取引所のスポット価格が上昇しました。これは小売電気事業者だけではなく、電気供給を受けている需要家にも影響を与えました。市場連動型の電気契約を選択していた場合、支払額が市場高騰に連動して大幅に高騰する事例が発生しました。

スポット価格が上昇した結果として、インバランスが生じた小売電気事業者のインバランス料金が大きくなりました。ただし、経済産業省も事態を重く見て複数の対応を行いました。まずは2021年1月15日の段階で「インバランス料金等単価の上限を200円/kWhとする(1月17日から6月30日までの時限措置)」との特例認可を実行しました。

他にも、次のような対応が発表されました。
1:2021年1月のインバランス料金等を12月まで分割して支払うことを可能とした
2:日本卸電力取引所に対し、小売電気事業者等が支払うべき預託金について柔軟に対応することを求めた

「2」の対応は、日本卸電力取引所で取引するためには一定の預託金が必要なことに係るものです。高額なインバランス料金の支払いで資金が不足する小売電気事業者の発生が考えられるため、柔軟な対応を求めたのです。

2022年以降の動きも注目したい

電力・ガス取引監視等委員会の「2022年度以降のインバランス料金制度について(中間とりまとめ)」ではインバランス料金について、発生させた差分に対して「合理的な価格で精算させる」との方針を打ち出しています。これは電力の実需要に応じたインバランス料金を設定しようとする動きです。

例えば電力不足が深刻な場面で「計画よりも少ない電力しか供給できなかった」場合の責任は通常より重いといえます。そのため、そのようなケースではインバランス料金が上がる補正をかけるとしています。同時に、インバランス料金に関する情報を迅速に公開することも盛り込まれています。情報をより早く手にすることで、小売電気事業者自らによる調整をしやすくするのが目的です。

今後もインバランス制度は、イレギュラーな事態が発生した場合に特別な対応がなされたり、改善のための改正が定期的に行われると推測されます。常に動向に気を配っていくことが求められるでしょう。

インバランス制度の目的とリスクを確認しよう

インバランス制度は、電気を安定して需要者に届けるために必要な制度です。しかし小売電気事業者にとっては思わぬリスクにつながる可能性があります。制度内容を確認することで事業に悪影響が出ないように配慮しながら、制度改正や特例などの最新情報にも気を配っていくことが求められます。

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