SDGsは世界全体をより良くするために打ち立てられた世界共通の目標ですが、具体的にどのような背景や目的があったのかを、今回のコラムで詳しく説明します。17の目標についても1つずつ確認していきましょう。
世界中がSDGsに目を向けるなかで、日本ではどのような現状なのか、政府の取り組みや各企業・地域の事例についても紹介します。
目次
世界が注目しているSDGsについて解説
SDGsとは
SDGsとは、「Sustainable Development Goals」の略称です。「持続可能な開発目標」と和訳されています。
SDGsが採択されたのは、2015年9月25日の国連サミットでのこと。国連加盟国193カ国が、2016年から2030年までの長期的な指針として「持続可能な開発のための2030アジェンダ」を策定しました。
この中核をなしているのがSDGsであり、世界全体が実現するために立てた共通の目標です。
「持続可能な開発目標」は、具体的に17のゴールと169のターゲットによって構成されており、地球上の「誰一人として取り残さない(leave no one behind)」ことを誓っています。
SDGsが誕生した背景
SDGs以前に、MDGs(エムディージーズ)と呼ばれる国際社会の共通目標がありました。通称、ミレニアム開発目標です。MDGsは、これまで国際会議で採択された国際開発目標と、2000年の「国連ミレニアム宣言」を統合させて、2001年に策定されました。
テーマは「2015年までに世界の貧困を半減する」(貧困とは、1日1.25ドル未満で生活する人口)ことです。国際社会において支援が必要とされる課題に対して、8つの目標と21のターゲット、60の指標が掲げられ、結果的にMDGsは一定の成果をおさめることができました。例えば、10億人以上の極度の貧困の半減や開発途上地域での栄養不良人口の半減、HIV・マラリア対策などです。
一方で、未達成に終わった課題もあります。サハラ以南でのアフリカ圏における極度の貧困状態、乳幼児や妊産婦の死亡率削減などです。
そして2015年に達成期限を迎えたMDGsを土台にして新しい世界共通の目標が求められ、そこで誕生したのがSDGsです。SDGsがMDGsと異なるのは発展途上国だけではなく、先進国を含む世界全体が課題に取り組むという点です。貧困や保健、教育問題以外にも、自然エネルギーや持続可能な消費、イノベーションといった課題が新たに盛り込まれました。
具体的に17項目の行動指針を、1つずつみていきましょう。
SDGsの17項目
● ゴール1:貧困をなくそう(NO POVERTY)
⇒ 詳細:あらゆる場所、あらゆる形態の貧困を終わらせる。
● ゴール2:飢餓をゼロに(ZERO HUNGER)
⇒ 詳細:飢餓を終わらせ、食料安全保障及び栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進する。
● ゴール3:すべての人に健康と福祉を(GOOD HEALTH AND WELL-BEING)
⇒ 詳細:あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する。
● ゴール4:質の高い教育をみんなに(QUALITY EDUCATION)
⇒ 詳細:すべての人に包摂的かつ公正な質の高い教育を確保し、生涯学習の機会を促進する。
● ゴール5:ジェンダー平等を実現しよう(GENDER EQUALITY)
⇒ 詳細:ジェンダー平等を達成し、すべての女性及び女児のエンパワーメントを行う。
● ゴール6:安全な水とトイレを世界中に (CLEAN WATER AND SANITATION)
⇒ 詳細:すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する。
● ゴール7:エネルギーをみんなに そしてクリーンに(AFFORDABLE AND CLEAN ENERGY)
⇒ 詳細:すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する。
● ゴール8:働きがいも経済成長も(DECENT WORK AND ECONOMIC GROWTH)
⇒ 詳細:包摂的かつ持続可能な経済成長及びすべての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)を促進する。
● ゴール9:産業と技術革新の基盤をつくろう(INDUSTRY, INNOVATION AND INFRASTRUCTURE)
⇒ 詳細:強靱(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの推進を図る。
● ゴール10:人や国の不平等をなくそう(REDUCED INEQUALITIES)
⇒ 詳細:各国内及び各国間の不平等を是正する。
● ゴール11:住み続けられるまちづくりを(SUSTAINABLE CITIES AND COMMUNITIES)
⇒ 詳細:包摂的で安全かつ強靱(レジリエント)で持続可能な都市及び人間居住を実現する。
● ゴール12:つくる責任 つかう責任 (RESPONSIBLE CONSUMPTION AND PRODUCTION)
⇒ 詳細:持続可能な生産消費形態を確保する。
● ゴール13:気候変動に具体的な対策を(CLIMATE ACTION)
⇒ 詳細:気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる。
● ゴール14:海の豊かさを守ろう(LIFE BELOW WATER)
⇒ 詳細:持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する。
● ゴール15:陸の豊かさを守ろう(LIFE ON LAND)
⇒ 詳細:陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処、ならびに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する。
● ゴール16:平和と公正をすべての人に(PEACE, JUSTICE AND STRONG INSTITUTIONS)
⇒ 詳細:持続可能な開発のための平和で包摂的な社会を促進し、すべての人々に司法へのアクセスを提供し、あらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包摂的な制度を構築する。
● ゴール17:パートナーシップで目標を達成しよう(PARTNERSHIPS FOR THE GOALS)
⇒ 詳細:持続可能な開発のための実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する。
ここで重要なのは、各ゴールの相関性です。例えば平和の実現や経済成長をせずに、貧困や飢餓を減少させることはできません。総合的にアプローチすることが求められています。
17項目に紐づいて、169のターゲットと232の指標が設定されました。ターゲットでは具体的な期限と行動が挙げられ、指標ではターゲットの進捗が細かく計られます。
日本におけるSDGsの現状
SDGsの達成状況は毎年発行されている「SDG Index and Dashboards Report」で、世界各国のスコアが確認できます。17項目に対する達成度合いが分析されてスコア化され、ランキングとして発表されています。
2019年版ではデンマーク(85.2)が1位に輝きました。その後をスウェーデン(85.0)、フィンランド(82.8)と北欧勢が続きます。
日本は156カ国のうち17位(79.17)にランクインしています(2020年6月30日時点)。評価されているのは、質の高い教育と産業と技術革新です。一方で、ジェンダー平等、消費と生産、気候変動、パートナーシップにおいては課題が残されています。例えば男女雇用・賃金の格差解消や食料の廃棄、天然資源の再利用といった問題です。
ランキング上位国と日本の違いは、国だけではなく企業も目標を実現するための行動計画を定めている点です。SDGsは企業や地域が一体となって達成すべき課題といえるでしょう。
そこで実際に、日本でSDGsの取り組みをしている事例を紹介します。
SDGsの事例
日本
① 女子教育支援
日本政府は「すべての女性が輝く社会」を実現するために、女子の就学・修了率の向上と就業への連結、公衆衛生・母子保健等の教育に力を注いでおり、すべての段階における教育・就業におけるジェンダー格差の是正を目指しています。例えば今まで家庭の事情で社会進出ができなかった女性に対して、職業訓練を通して就職や起業などを促進しています。
女性が社会に参画しやすいように、ライフステージに応じた施策を紹介する「女性応援ポータルサイト」も設けられました。
② 防災・減災
熊本地震や東日本大震災をはじめ、毎年のように発生する地震・台風・豪雨などの自然災害。ここ数年で、災害に負けない社会構築や防災・減災に対する活動が強化されています。例えば防災に関する国際会議「世界防災閣僚会議 in 東北」では、近年の大規模な自然災害の経験・知識を世界に発信しています。
ほかにも「防災アジェンダの達成に向けた展望」というG20開発作業部会サイドイベントなども開催されています。
企業
① 株式会社笑下村塾
お笑い芸人たかまつなな氏が設立した会社で、お笑い芸人による主権者教育・SDGs・キャリア教育に関する出張授業・講義を、学校・企業で展開しています。
ゴール17「パートナーシップで目標を達成しよう」に特化した取り組みを展開中。「笑って学ぶSDGs」という教材や、SDGsババ抜きカードゲームを使って、SDGsへの理解を深める出張授業やオンライン授業などをおこなっています。
② 株式会社エコスタイル
自家消費型太陽光発電などの太陽光発電事業や電力小売事業などを展開している会社です。
「再生可能エネルギーの普及・促進」、「環境教育」、「ダイバーシティの推進」をCSR基本方針として掲げており、活動内容の1つが『エコの輪をひろげよう!プロジェクト』です。
例えば、幼稚園・保育園等の教育施設へ自家消費型太陽光発電システムを無償で提供する「おひさまこっこプロジェクト」や、学校や太陽光発電所へ出張し環境教育を行う「エコの輪環境教室」に取り込んでいます。
地域
① 奈良県生駒郡三郷町
三郷町は、SDGs未来都市に選定されています。ビジョンは「世界に誇る!!人にもまちにもレジリエンスな『スマートシティSANGO』の実現」。
大雨による水害を被ったことから、大雨を引き起こす地球温暖化を防止するために「エネルギーを無駄づかいしない」、「自然が生み出す再生エネルギーを利用する」活動を行っています。
例えば「COOL CHOICE事業」や「カーボン・マネジメント強化事業」、「自立分散型電源の普及」などに取り組んでいます。
② 福岡県北九州市
SDGs未来都市に選定された福岡県北九州市。「『真の豊かさ』にあふれ、世界に貢献し、信頼される『グリーン成長都市』」をビジョンに掲げています。
特に注力しているのが地域エネルギー次世代モデル事業で、低炭素エネルギーの振興や環境産業の活性化に取り組んでいます。
最近では、日産自動車と九州電力グループとともに電気自動車(EV)を活用したSDGs連携協定を締結しました。電気自動車の活用・普及を促進させ、低炭素社会の実現を目指します。
世界中で団結してSDGsに取り組もう
世界全体で共通の目標に取り組むSDGsについて解説をしました。
2030年に向けて、日本国内の企業や行政の取り組みは活性化していくと考えられます。
これからも最新の動向をチェックしながら、私たちにもできる小さな取り組み「エコアクション」をご家族やお友達と実施してみてはいかがでしょうか?
● 一人ひとりが取り組める「エコアクション」
・冷房の温度設定を2℃上げる、又は暖房の温度設定を2℃下げる。
・古い電化製品を新しいものに買い替える。
・電気をこまめに消す。
・冷蔵庫には、ものを詰め込みすぎない。冷凍庫は隙間なく詰める。
・近い距離は公共交通機関や自転車を利用する。
・マイ箸、マイボトル、マイバッグをもつようにする。
・グリーンカーテンを設置する。
・環境に配慮した電力プランに切り替える。
など