石油や石炭火力は確かに、私たち人間社会を大きく発展させました。しかしそこから発生する多くの二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスが、地球環境を激変させてしまった事実も否定できません。まさに今、私たち一人ひとりがエネルギーの考え方を見直すべき時にいます。そこで見出された新たな希望こそが、再生可能エネルギーなのです。
今回はこの再生可能エネルギーについて、メリットと重要性をお話ししましょう。
石油・石炭火力の発展、しかし悲鳴を上げる地球
地球温暖化による世界的異変は人間にも危険が
1960年代の高度経済成長時代以降、日本では急速に火力エネルギーの使用割合が増加しました。
私たち人間の生活が便利になった一方で、澄んでいた大気や水は濁り、ついには地球環境に深刻な影響を及ぼしています。火力発電所などから発生した二酸化炭素は、地球の温度を上昇させ、「地球温暖化」を引き起こします。
ヨーロッパアルプスを貫く巨大氷河は、その規模を大きく縮小してしまいました。また極寒の南極大陸でも、米国カリフォルニア州の面積に相当する氷が崩落しています。
日本でも暑さや水害とは無縁だった北海道で37℃を超える猛暑が記録され、大雨による大規模水害なども全国で毎年のように発生しています。近年の異常なまでの気象現象は、地球温暖化と無関係ではないでしょう。
このまま二酸化炭素排出量が増え続ければ、さらに温暖化が進むことは間違いありません。そして地球温暖化はさらなる異常気象を発生させ、私たち人間の命を脅かしはじめるのです。
地球温暖化の元となる二酸化炭素排出量の多い火力発電などの在り方を、見直すべき時がやってきたのでしょう。
だからこそ再生可能エネルギーが大切
そこで注目されるのが「再生可能エネルギー」です。再生可能エネルギーは名称のとおり、エネルギー資源が枯渇せず何度も使用可能なエネルギーのこと。地球温暖化の原因である二酸化炭素を排出せず、再生可能エネルギーをつくる資源は地球の自然環境に際限なく存在するものなので、石油や石炭のように資源が失われることもありません。
本記事で紹介する再生可能エネルギーは、すべて発電源として重要視されています。
太陽光は大空に光り輝く巨大なパワー
太陽光は今最も注目されるエネルギーでしょう。近年あちこちの建物に、大きなパネルが設置されています。このパネルには専用電池が組み込まれており、太陽光が当たることで発電源となるのです。近年では各地で大規模な自然災害が相次ぎ、長時間にわたる停電が人々を苦しめました。そのような災害時でも太陽が出ていれば発電が可能となり電気を使用することができるので、エネルギー業界をはじめとして企業や自治体などからも注目を浴びています。
いつも地球を明るく照らしてくれる、最大のエネルギーです。
風は昼夜関係ない無限の自然パワー
太陽光の次に注目されるのは風力によるエネルギーでしょう。広大な海岸などで巨大な風車が建ち並ぶ光景を、よく見かけるようになりました。この巨大風車を回転させて運動力に変え、大きなエネルギーを生み出すのです。とりわけ外洋に面した場所は、常に強い風が吹きつけます。日本の代表的な例では、千葉県最東端の銚子市で太平洋上に並ぶ巨大風車を見ることができます。
風力は日夜を問わず24時間発生するので、その重要度は太陽光に劣りません。
地熱は地球を形成してきた火山のパワー
日本は火山の多い国です。そして世界中を見渡しても、大小さまざまな火山が見られます。
火山のある所には、地下に高温の蒸気が蓄えられています。この蒸気が地熱エネルギーになり、また温泉としても活用されます。ちなみに日本の地熱発電エネルギー量は、世界第3位とされています。現在日本には岩手県八幡平市をはじめ、計21ヶ所の地熱発電所が稼働しています。
地球を動かしてきた火山と大地のエネルギーこそ、活かさない方法はありません。
水は人間が生きるにも不可欠なパワー
水力による発電は、日本では明治時代に始まった最も古い再生可能エネルギー発電方法です。名称のとおり水の力で専用機を回転させ、エネルギーを発生させます。現在も日本各地の山間部に流れる河川と大規模ダムに代表される水力発電が見られます。また電力会社だけでなく個人でも運用可能な、小規模なマイクロ水力発電もあります。
私たちの生活に欠かせない大切な水。この水による限りない力も、立派な再生可能エネルギーです。
バイオマスは廃棄物からおこす新たなパワー
バイオマス発電とは1990年代頃から注目されはじめた、新たな発電方法です。これは主に木材や生ごみ、さらには廃油や動物の糞尿に至るまでの生物資源を活用した発電方法であり、「動植物から生まれた再生可能なエネルギー」と位置付けられるでしょう。つまり私たち人間が出す廃棄物も新たなエネルギーになるのです。これはゴミなどを燃やす過程で発電させるため、二酸化炭素が少なからず排出されます。しかし、バイオマス資源の基となる植物が成長する過程で光合成により二酸化炭素を吸収するため、排出量と吸収量が釣り合うことで結果的に二酸化炭素の増減に影響しない「カーボンニュートラル」という特異な概念で、再生可能エネルギーの一種と認められました。
以上の他に、月や太陽の位置関係と海水の移動を利用した「潮汐力」や、間断なく打ち寄せる波を利用した「波力」など、大いなる海洋も再生可能エネルギーを作り出す資源として注目されています。
ここまで代表的な再生可能エネルギーを5つ紹介してきました。冒頭に「再生可能エネルギーという言葉を聞くだけで、将来的な希望を感じる」と書きましたが、既に将来的な希望に向け動き出しているのです。
再生可能エネルギー、そのメリットと重要性
日本でも世界でも本格的に動き出した
2009年7月に制定された「エネルギー供給構造高度化法」により、太陽光・風力・地熱・水力・バイオマスなどは、再生可能エネルギーとして公に認められました。また2015年から2016年には「パリ協定」で、地球の気温上昇を抑える世界的な取り決めがされています。
日本でも世界でも決定した法律や協定により、再生可能エネルギーは地球の将来を担うことになったのです。
地球の自然がある限り、永遠に続くエネルギー
再生可能エネルギーとして定義されるには、枯渇しない、二酸化炭素を出さない、いつでもどこでも活用できる、という3つの条件があります。同時にこの3つの条件こそが再生可能エネルギーを導入する大きなメリットと言えるでしょう。空に太陽が輝き、風が吹きわたり、地に熱と水と動植物が躍動する限り、永遠にエネルギーを得ることができます。太陽・風・地熱・水・バイオマスそれぞれが発するエネルギーなので、自然の大きな力が生かされるのです。
世界に頼る日本だからこそ、再生可能エネルギーの普及を
そして再生可能エネルギーが必要な理由の一つに、日本のエネルギー事情が挙げられます。日本は発電用燃料など人間の生活に必要な資源を、ほとんど海外の国々からの輸入に頼ってきました。しかし近年、海外の資源はどんどん高騰し、入手することが難しくなっているのです。このままではエネルギー資源を確保できなくなる日が来てしまうかもしれません。だからこそ今、再生可能エネルギーの普及が重要になってきているのです。
火力発電の優位は変わらず、しかし確かな変化も
では再生可能エネルギーがどれだけ普及しているのか、ごく簡単に紹介しましょう。火力エネルギーが変わらず普及率トップを走っていますが、最近の約10年間でその普及率の数値が上下しています。その一因が再生可能エネルギー発電の急速な普及です。
火力エネルギーと再生可能エネルギーの割合の推移は、各国の経済事情や戦略的な駆け引きも関係しているのでしょう。
世界の中にあって日本は…厳しい現実も
再生可能エネルギーが普及している国の代表格は、2020年6月現在でデンマークやカナダとされています。その中にあって日本は、まだ低位置と言わざるを得ません。再生可能エネルギーの普及には、相応規模の土地や施設が必要です。地元の人々や観光機関との関係は、普及を進める上で軽視できない問題です。
身近に行われている再生可能エネルギー
一つの例を挙げましょう。日本を代表する観光地・神奈川県箱根町に、青々とした芦ノ湖が水を湛えています。この水を静岡県側に流し込み、3ヶ所の水力発電所を開発しました。これが静岡県裾野市の電力源となると共に、周辺集落を潤す農業用水となったのです。芦ノ湖の水を通しているのは、なんと江戸時代に造られたトンネル。発電所は大正時代に運用を開始しました。地元の人々が先人たちの労苦を、再生可能エネルギーに形を変え受け継いだのです。
自然の力を活用できる再生可能エネルギー。これがさらに進歩・普及していけば、ヨーロッパアルプスの巨大氷河や南極大陸の氷の減少を食い止められるかもしれません。また、日本を襲う自然災害も、以前のように規模や頻度が縮小していくかもしれません。
これからの地球に生きる人々へ、豊かな地球環境と再生可能エネルギーを
世界初の火力発電所は、かのトーマス・エジソンがつくりました。そのエジソンはこんな名言を遺しています。
今の地球をエジソンは、遠い空からどう見ているのでしょうか。
私たちが生活していくために必要な「エネルギー」。
このエネルギーを生み出す方法として、最も地球の自然環境にとって良いものは、同じ地球の自然環境から生み出す方法なのではないでしょうか。
再生可能エネルギーに、将来の希望を託してみませんか。