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夏と冬ではどちらの電気代が高い?
一年の中で一番電気代がかかるとされているのが、夏と冬です。夏は暑いので冷房を、冬は寒いので暖房を多用します。では、夏と冬ではどちらの方が電気代が高いのでしょうか。一般家庭の支出データを見ると、意外な結果が見つかりました。
電気代がかかるのは冬。その理由は?
夏と冬の一般家庭の平均的な電気代はそれぞれいくらなのでしょうか。総務省の家計調査データでは、2人以上の世帯の電気代は、1ヶ月当り平均1万111円(2017年)です。
※総務省統計「1世帯当たり1ヶ月間の収入と支出(2人以上の世帯のうち勤労者世帯)」より
ご覧の通り、やはり季節ごとに大きく変動するのがわかります。最も電気代が高くなるのが、1月から3月にかけての冬季期間です。7月から9月の夏季期間は、意外にも電気代はそこまで上がっていないこともわかります。もちろん、5~6月の春、10~11月の秋に比べると高めになってはいますが、7月と8月の電気代は平均よりも低いほどです。
夏に比べて冬の電気代が高くなるのには、主に3つの理由があります。
① 気温の違い
夏と冬の最も大きな違いは、気温です。気温によってエアコンや電気ストーブなどの電気使用量が増えるため、どちらの季節も電気代が高くなります。ただし、夏よりも冬の方が外気温とエアコンの設定温度の差が大きくなる傾向にあります。真夏日の35℃で、冷房の設定温度を28℃にすると、気温差は7℃です。冬の場合、外気温が0℃のときに暖房の設定温度を20℃にすると、気温差は20℃になります。
気温差が大きいほどエアコンの電気使用量は大きくなるので、同じエアコンでも冬の方が電気代が高くなるのです。
② 日照時間の違い
日照時間は夏季が長く、冬季には短くなります。そのため、照明をつけている時間は夏が短く、冬は長くなります。照明の電気代はそれほど高くないイメージですが、複数の部屋の照明を同時に長時間使用していると、電気使用量は大きくなるのです。
③ 在宅時間の違い
夏は行楽シーズンで、冬は巣ごもりの傾向にあることも関係しているかもしれません。観光庁のデータによると、夏季(7-9月期)の国内旅行消費額は約63億円で最も多く、冬季(1-3月期)は約44億円で最も少ない季節です。家にいる時間の長い冬に電気代が上がるのは当然といえるでしょう。
季節家電の電気代を比較
夏と冬、それぞれの季節で活躍する家電の電気代を比較してみました。
〇 冬:オイルヒーター、遠赤外線ヒーター、ホットカーペット(2畳用)
計算方法は、
としています。
〇 夏の家電
家電名 | 消費電力 | 1日の電気代 | 1ヶ月の電気代 |
---|---|---|---|
クーラー(6~9畳用) | 635W | 137.2円 | 4,115円 |
扇風機 | 23W | 5.0円 | 149円 |
夏に最も電気代のかかる家電がクーラーです。一方、夏の風物詩ともいえる扇風機ですが、電気代はクーラーの5%以下です。
〇 冬の家電
家電名 | 消費電力 | 1日の電気代 | 1ヶ月の電気代 |
---|---|---|---|
オイルヒーター | 1300W | 280.8円 | 8,424円 |
遠赤外線ヒーター | 650W | 140.4円 | 4,212円 |
ホットカーペット(2畳用) | 500W | 108.0円 | 3,240円 |
冬の暖房家電はどれも電気代が高くつきます。中でも大きいのがオイルヒーターです。空気が汚れず、安全性の高さから子育て家庭に人気がありますが、遠赤外線ヒーターの約2倍の電気代がかかります。
〇 季節ごとに電気代の変わる家電
年間を通じて使っている家電でも、季節によって電気代が変わるものがあります。
・冷蔵庫
冷蔵庫は常に中の空気が冷えている状態であれば電気代は安くできますが、外気が高くなる夏は冷蔵庫の中に暖かい空気が入ってくるため、冬と比べると電気代が高くなります。
冬には20~35Wの消費電力でも、夏には80~90Wと、2~3倍の違いが出るとされています。
・電気温水器
電気温水器は、水を電気ヒーターによって温めることでお湯を沸かす機器です。水温の下がる冬場では、当然温める力が必要になるので電気代も高くなります。
例えば、年間平均気温8.9℃(札幌市)の北海道では、電気温水器にかかる電気代は年間約10万8000円ですが、年間平均気温17.9℃(福岡県)の九州では、電気温水器にかかる電気代は年間約7万8000円です。
平均気温が9℃低いと、電気温水器の電気代は年間約3万円高くなります。
年間平均気温 | 電気温水器の年間電気代 | |
---|---|---|
北海道 | 8.9℃(札幌市) | 約10万8000円 |
九州 | 17.9℃(福岡県) | 約7万8000円 |
春と秋の電気代は?
春と秋は、最も電気代がかからなくなる季節です。特に5~6月と10~11月が低くなっています。季節家電として電気代のかかる冷房や暖房器具が不要となるため、夏や冬と比べると大きく抑えられます。
夏と冬にできる電気代節約方法
こうした季節ごとの特徴を踏まえて、電気代の節約方法を解説します。
夏の電気代を節約する方法
夏に電力量の大きい家電はエアコンと冷蔵庫です。暑い外気温との差を最小限にするのがポイントです。
① 冷房の温度設定を上げる
冷房の温度設定を上げると、電力消費量が抑えられます。家電メーカーでは、冷房は28℃にするよう推奨されています。設定温度を1℃上げると、約10%の節電になり、年換算で約820円の節約になります。
② フィルターの掃除をする
フィルターの掃除をすると、ほこりなどで目詰まりしているエアコンの稼働効率がよくなります。たいていのエアコンはフィルターの脱着が簡単にできるので、あまり手間はかかりません。月に1・2回は掃除するようにしましょう。年間で約860円の節約になります。
③ 扇風機を積極的に使う
熱中症対策のため冷房の使用を控えることはあまりおすすめできませんが、気温の低い時間帯は扇風機をフル活用して涼を取るようにしましょう。直風に当たると、かなり体温を下げることができます。扇風機の消費電力はエアコンの5%以下なので、かなりの電気代を節約できます。
④ 簾やグリーンカーテンで日陰をつくる
簾やグリーンカーテンで日陰をつくると、室温の上昇を抑えられます。見た目にも涼しげです。また、カーテンを閉めることで同じように室温が上がるのを抑えられます。外出時はカーテンを閉めておくことをおすすめします。
⑤ 冷蔵庫の使い方を工夫する
夏は冷蔵庫の使い方を次のように工夫して、電気の節約をしましょう。
・冷蔵庫に食品を詰めこみすぎない
物が多すぎると、冷気が循環せず、効率が悪くなります。
・引き出し式の冷凍庫は食品をたくさん詰める
開け閉めしたときに暖かい空気が入るのを防ぎ、食品自体が保冷の役割をします。
・開け閉めの回数を少なくする
戸を開け閉めするたびに冷気が逃げるため、食品の出し入れは一度に行い、手早くすませます。
最近の冷蔵庫は、10年くらい前の物と比べて約半分の消費電力になっています。古い冷蔵庫を使っている方は、電気代の節約のためにも新しく買い替えを検討してみてはいかがでしょうか。
冬の電気代を節約する方法
冬は電気代が一番高くなる季節。冬の節電は、外の冷たい空気を家の中に入れないことです。
① 暖房の設定温度を下げる
冬の気温は0~10℃。家電メーカーが推奨する設定温度は20℃です。夏に比べると外気温と設定温度の差が大きいので、それだけ暖房費は高くなってしまいます。設定温度は上げすぎないようにしましょう。21℃から20℃に下げると、年換算で約1,430円の節約になります。
② フィルターの掃除をする
冬は空気が乾燥して部屋がほこりっぽくなるので、フィルターが目詰まりしやすくなります。たいていのエアコンはフィルターの脱着が簡単にできるので、手間はかかりません。月に1~2回はフィルターの掃除をするようにしましょう。フィルター掃除で、年間約860円の節約になります。
③ サーキュレーターで部屋の空気を回す
暖かい空気は、冷たい空気よりも軽いため、天井に溜まってしまいます。サーキュレーターを補助的に使うと、室内の空気が回り、効率的に部屋を暖められます。新しくサーキュレーターを買わなくても、夏用の扇風機でも十分な効果が得られます。
④ 窓や扉で寒い空気を遮断する
窓ガラスは外の寒気で冷たくなりやすく、部屋を冷やします。厚手のカーテンで床まで覆うことで断熱対策になります。また、リビングや自室など、居住空間は扉やカーテンなどでしっかりと区切り、寒気が入らないようにして暖房効率を高めましょう。
⑤ 厚着をする
原始的な対策ですが、やはり温かい恰好をすることが一番です。厚手の上着を羽織ったり、底の厚い靴下を履いたりして体を温めましょう。
⑥ LED電球に替える
日の出から日没までが短くなる冬は、その分だけ照明をつける時間が長くなります。人数が多いご家庭ほど照明をつける部屋数も増えるので、意外と電力を使っています。白熱電球や蛍光灯を使っている方は、LEDランプに変えることで節電になります。54Wの白熱電球から9WのLEDランプに取り換えた場合、年間約2,430円の節約になります。
⑦ お風呂の時間は皆でまとめて
冬場はお風呂の湯温が下がりやすくなります。追い炊きをするとその分電気代がかかってしまうため、家族の入浴はそれぞれ時間を置かずに続けて入るようにしましょう。
いつでもできる電気代の節約方法
これまでは特に夏と冬に焦点を当てて、節電方法を見てきました。他にも、季節に関係なく電気代を節約する方法があります。
アンペア数を下げる
従量電灯Bで契約しているご家庭は、アンペア数を下げると電気代を節約できます。アンペア数とは、同時に使える電気の量をいいます。もし実際の使用状況よりも大きいアンペア数で契約している場合、ひとつ下げることで基本料金を下げられます。
※ 関西電力、中国電力、四国電力の従量電灯Aには、基本料金がないのでご注意ください。
東京電力の従量電灯Bの基本料金は以下の通りです。
アンペア数 | 料金(税込) |
---|---|
10A | 286.00円 |
15A | 429.00円 |
20A | 572.00円 |
30A | 858.00円 |
40A | 1,144.00円 |
50A | 1,430.00円 |
60A | 1,716.00円 |
ただし、無理にアンペア数を下げるとブレーカーが頻繁に落ちるようになってしまいます。エコ家電に替えたり、家族構成が変わったりして、以前よりも電気使用量が少なくなっているご家庭は、検討してみるといいかもしれません。
以下表は、家電の種類とアンペア数の目安です。
エアコン (暖房) |
冷蔵庫 | 照明 (合計) |
IHジャー 炊飯器 |
テレビ (液晶42型) |
|
---|---|---|---|---|---|
アンペア(A) | 6.6 | 2.5 | 2 | 13 | 2.1 |
電力会社を替える
2016年4月から、電気の小売業が全面的に自由化されました。電力会社や料金メニューの選択肢が増え、一般家庭でもご家庭の生活様式に合ったプランが選べるようになっています。何年間も電気代の見直しをしていないというご家庭は、現在の契約内容を確認し、よりお得な電力会社へ切り替えると電気代の節約になる可能性があります。
電気代の節約は冬が重要
電気の使い方は、季節によって異なります。特に冬は1年間の中で最も電気を消費する季節です。エアコンと照明の使用を少し工夫するだけで、電気代を大きく節約できます。節電以外にも、契約内容や電力会社を見直すと、電気代を安くできる可能性があります。これを機に一度、ご家庭の電気料金を見直してみてはいかがでしょうか。