スマートメーターは従来の電力メーターと一体なにが違うのでしょうか。そして電力会社を切り替える際に、なぜ設置が必要になってくるのでしょうか。
今回は、スマートメーターの特徴や役割を解説しながら、そのメリット・デメリットや導入方法についても詳しく説明します。
目次
スマートメーターってそもそも何?
スマートメーターとは
2016年4月、電力の小売事業が全面的に自由化され、消費者はライフスタイルに応じて電力会社や料金プランを自由に選ぶことができるようになりました。
そして、電力会社の切り替えを検討する際、よく耳にするのがスマートメーターという言葉です。
これまで使用されていた、人が計測をする機械式メーターに代わり日本国内で普及し始めているスマートメーターとは、デジタル式電力メーターのことです。電力使用量(kWh)の表示箇所がデジタル化され、電力の使用量を30分ごとに計測・記録できるようになりました。
さらには通信機能も兼ね備えているため、電力消費量のデータを電力会社などの遠隔地に転送させることができます。また、電気を流すON・OFFの遠隔操作や、ブレーカーが落ちてしまった際の自動復旧も可能です。
スマートメーター導入の背景
スマートメーターを導入するきっかけとなったのは、2014年4月1日に施行されたエネルギー使用の合理化等に関する法律の改正です。これは地球環境問題を解決するために施行された、省エネルギーに関する法律です。電力需給量を安定化させるために、電力の自由化だけではなくスマートメーターを設置する流れとなりました。日本政府は、2024年までにすべての電力メーターをスマートメーターに切り替えるためのプロジェクトを推進しています。
中核となっている考え方は、「省エネ・低炭素社会を実現するため利用者が自らのエネルギー情報を把握、利用することで、省エネ意識を高め、各々の行動変化を促すこと」です。
この方針に合わせ、各電力会社がスマートメーターの導入計画を立てて順次導入を進めていますが、2020年時点ではスマートメーターがまだ設置されていない住居・マンション・ビルも少なくありません。
では、従来の機械式メーターとスマートメーターでは、なにが違うのでしょうか。さらに、どのような形で電力需給量の安定化につながるのか、詳しく解説をしていきます。
電力不足の解消に期待できるスマートメーター
スマートメーターと機械式メーターの違い
機械式メーターは、正式には「アナログ式誘導型電力量計」といいます。メーターは本体の表面が透明になっており、中には電気を使用するとくるくる回転する円盤が取りつけられています。この円盤とメーターが連動しており、電力使用量(kWh)を計測できる仕組みです。
従来の機械式メーターでは月に1度、検針員が各建物まで足を運び、電気の使用量を読み取っていました。1ヶ月の電気料金を算出・確定し、検針票や電気ご使用のお知らせを通して契約者に電気料金を案内するという手法でした。
しかし、スマートメーターの場合は検針員による読み取り作業が必要ありません。すべてデジタル化されデータ通信で完結できるため、電力会社側の人手不足を解消する手段としても注目が集まりました。スマートメーターに切り替えることで、人件費の削減や業務の効率化が実現できます。
なぜスマートメーターが省エネなのか
スマートメーターは、30分ごとに電気消費量を計測・集計ができます。つまり機械式メーターのように月単位ではなく、時間帯ごとに細かく電気使用量データを把握することが可能なのです。
さらにスマート家電やHEMSなどの家庭内マネジメントシステムと連動すれば、電気をリアルタイムで「見える化」させることが可能なので、いつでもどこからでもスマートフォンやタブレットで電気の使用状況をチェックできます。どの時間帯に電力を使いすぎているのかを見える化できれば、電気使用量のコントロールや節約ができるようになるのです。電気の使用状況を知ることで、ライフスタイルに合った電力会社や料金プランを選ぶ基準にもなるでしょう。ご家庭によっては、大幅に電気代を節約できるかもしれません。
また、スマートメーターの設置によって、緊急時などには電力会社側からでも建物や地域単位で、電力供給量を一時的にコントロールすることができます。
このような理由から、スマートメーターは省エネに効果的だと考えられているわけです。
スマートメーターのメリット・デメリット
省エネ以外にも、スマートメーターを設置するメリットがあります。例えば、電力使用量の変化をリアルタイムで確認することで、要介護者や高齢者の見守りサービスとして利用できる点です。家族が遠い場所に住んでいる場合、電力使用量の変化によって異変を察知することが可能となるのです。
将来性に期待が集まる一方、スマートメーターにはデメリットもあります。その1つがプライバシー上の問題です。デジタル化・通信機能が備わったことで外部からハッキングされる可能性があり、電力使用に関するデータが漏洩してしまう恐れがあります。またスマートメーターの不具合や、電磁波による人体への影響など、海外では一部不安の声もあがっています。
ただ、将来的には上記で挙げたようなリスクも考えられますが、現時点で日本国内において大きな問題が起こっているわけではありません。
スマートメーターを導入する
スマートメーターへ切り替えるには
まだスマートメーターが設置されてない場合、一般のご家庭で導入するにはどうすればいいのでしょうか。
大手電力会社は2016年に電力自由化される以前からスマートメーターへの交換作業に取りかかっていました。したがって2024年までには、「スマートメーターへの取替工事のお知らせ」というお知らせが届き、スマートメーターが設置される予定です。時期は、機械式メーターに記載の検定有効期限が目安となります。
スマートメーターへの交換作業は居住している地域の大手電力会社が対応することになっており、新規参入した小売電気事業者はスマートメーターへの交換作業を行っていません。配電や送電を担っているのは、従来の大手電力会社だからです。
それではスマートメーターへの交換は順番が回ってくるまで待つしかないのかというと、そうでもありません。実は電力会社からの通知を受け取る前にスマートメーターに交換してもらう方法があります。それは電力会社を切り替えることです。新規参入した小売電気事業者と新たに契約をする場合はスマートメーターの設置が必須となるため、優先的に交換してもらえるのです。住居の新築や引っ越しで、電力会社を見直す際によく利用されています。
交換費用や立ち会いは必要?
電力メーターの交換は、電力会社・電力工事会社の作業員が訪問をして行います。設置・作業にかかる料金は、原則発生しません。電力メーターの所有者が電力会社側のため、無料で交換してもらえます。またほとんどの場合、立ち会いや屋内作業は不要です。
ただし電力メーターが特殊な場所にある建物や、サービスブレーカーを取り外す必要がある場合など、状況に応じて立ち会いを求められることがあります。立ち会いや屋内作業の有無は電力会社から連絡が入りますが、気になる方は事前に確認をしておくとよいでしょう。
また作業にあたり、停電するかどうかは電力会社によって異なります。例えば、原則バイパスとなる電線を繋げて工事する東京電力では停電は発生しません。一方で、契約内容にもよりますが関西電力や東北電力では交換作業の際に停電させることが原則となっています。停電時間はおよそ5~15分程度で多くの場合は生活に支障をきたすことはありません。
ただ、水槽やアクアリウム、医療・介護機器、冷蔵庫・冷凍庫、パソコンなど、少しの時間であっても電源を落とせない電化製品がある場合は、事前に停電の有無・停電時間について電力会社に確認し、予備の電源を用意しておくことをおすすめします。
スマートメーターをスマートに使おう
今回のコラムでは、電力自由化とともに普及しつつあるスマートメーターについてご紹介しました。
スマートメーターは省エネ対策として、電力会社にとっても一般消費者にとってもメリットが大きく、電気の節約や検針作業効率においてもスマート化されることが期待できます。またスマートメーターへの切り替えには特別な手続きや費用は一切必要ありません。
現時点で機械式メーターを使用している場合は、ライフスタイルに合った電力プランへの切り替えを兼ねてスマートメーターへの早期交換を検討してみてはいかがでしょうか。